シングルマザー・イン・NYC
このアパートは彼らの職場に近く、建物もきれいで住みやすいことから、相当気に入っていたはずだ。

それがなぜ引っ越しを――。

俺はスマホで「ケイ・タカヤナギ」のホームページを検索し、「スタイリスト一覧」のページをクリックした。

トップ・スタイリストとして一番上に掲載されていた希和の写真と経歴はなく、そして、アレックスの写真も消えていた。

辞めたのか――。

俺は咄嗟に希和のスマホに電話をかけた。

だが、その番号はもう使われていなかった。

嫌な汗が背筋を伝うのを感じた。

「二人に何が? 部屋だけでなく、美容室も辞めてますよね? 連絡先は?」

思わずルーカスに詰め寄る。

だが彼はひたすら申し訳なさそうに、

「すみません、僕からは何とも――」

と謝るのみ。

俺は呆然と立ち尽くした。
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