シングルマザー・イン・NYC
目が合う。
「――あなた」
驚いた。
このホームレスのことは、希和とこの辺でデートした時に何度も見かけていたし、時々小銭をカップに入れていたのだが、彼女が口をきいたことは皆無だったのだ。
「久しぶりね」
「一年ぶりに戻ってきたんだ――二泊だけ、出張で」
俺はコートのポケットから一ドル札を出し、屈んで彼女の前に置かれたカップに入れた。
「いつもありがとう」
「どういたしまして」
「あの子に会いに来たの?」
――なんでわかるんだ?
「あたしはね、勘が鋭いのよ」
「会えなかったんだ。どこかに行ってしまった」
彼女はこくりと頷いた。
「どうしても会いたい? どういう結果になっても後悔しない?」
「ああ」
彼女は少し考えた後で、言った。
「最近、見かけたよ」
「……え。君」
「ジェニー」
「ジェニー。俺は樹。ジェニー、どこで彼女を?」
「セントラルパークの東側、グッゲンハイム美術館近くの桜並木」
「時間帯は」
「夕方。6時くらい」
「他に情報は」
「ない。それだけ。幸運を」
そう言うと、ジェニーはごろりと横になり、毛布をかぶった。
「――あなた」
驚いた。
このホームレスのことは、希和とこの辺でデートした時に何度も見かけていたし、時々小銭をカップに入れていたのだが、彼女が口をきいたことは皆無だったのだ。
「久しぶりね」
「一年ぶりに戻ってきたんだ――二泊だけ、出張で」
俺はコートのポケットから一ドル札を出し、屈んで彼女の前に置かれたカップに入れた。
「いつもありがとう」
「どういたしまして」
「あの子に会いに来たの?」
――なんでわかるんだ?
「あたしはね、勘が鋭いのよ」
「会えなかったんだ。どこかに行ってしまった」
彼女はこくりと頷いた。
「どうしても会いたい? どういう結果になっても後悔しない?」
「ああ」
彼女は少し考えた後で、言った。
「最近、見かけたよ」
「……え。君」
「ジェニー」
「ジェニー。俺は樹。ジェニー、どこで彼女を?」
「セントラルパークの東側、グッゲンハイム美術館近くの桜並木」
「時間帯は」
「夕方。6時くらい」
「他に情報は」
「ない。それだけ。幸運を」
そう言うと、ジェニーはごろりと横になり、毛布をかぶった。