シングルマザー・イン・NYC

翌朝。

俺は再び1ワールド・トレード・センターに赴き、クライアントと米国企業の交渉に立ち会った。
昨日は雲行きが怪しくなったが、今日は順調で、両社は無事、契約内容に合意した。

急いで昼食をとり、午後はミッドタウンにある別の日本企業のオフィスへ。
そこで法務担当者といくつかの打ち合わせを済ませ、これで今回の出張での業務は終了。

急いで数ブロック北にあるホテルに戻り、私服に着替えた。
希和に会えるかどうかわからないが、セントラルパークで待てるだけ待ってみよう。

ホテルのフロントを急いで出ようとすると、猫が一匹、ロビーを悠々とこちらに向かって歩いてきた――ハムレットだ。

このホテルには1920年代からずっと猫が一匹飼われていて、オスはハムレット、メスはマチルダ、という名前にするのが慣例なのだ。おもしろいことをするものだ。

足元でハムレットが立ち止まったので、喉元をなでてやると、彼はゴロゴロと喉を鳴らした。





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