セカンドマリッジリング【コミカライズ原作】


 花那(かな)颯真(そうま)の言葉が信じられなかった。記憶を失った花那の中で、母は病弱とはいえ今すぐ命の心配が必要な状態ではなかったのだから。
 いつも自分のことより花那の事を考えてくれた母親だった、花那にはもう家族と呼べる人は彼女しかいなかったというのに。

「お母さん……」

 花那の記憶にないだけで、彼女はきちんと母親と別れを告げている。それでも今の花那には受け入れがたい現実だった。
 しかし……

「すまない」

「……どうして、颯真さんが謝るの?」

 颯真の言葉に花那は背けたままだった顔を戻した。彼の言葉にどんな意味があるのか、そう考えて。

「君が、花那が泣きそうな顔をしてるから」

 相変わらず感情の変化は読み取れない、けれど颯真は間違いなく花那の事をきちんと見ていた。もしかしたら彼は、花那の母が亡くなったときもこうやって静かに見守っていたのかもしれない。

「どうして私が泣きそうだと謝るんですか?」

 今の颯真は悪い事をした後の子供のようにも見える。花那に何か言いたいのだろうが、その言葉を見つけきれていないような。
 颯真は少し唇を噛んだままじっと花那を見つめていたが、やがて諦めたように口を開いて——

「俺は夫なのに、悲しむ君に何も出来なかったから。今も、あの時も……」

「颯真さん、あの時って?」


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