セカンドマリッジリング【コミカライズ原作】
「もう二度と花那を失いたくないから、俺にはそう思う資格はないのかもしれないけれど」
その言葉が意味するもの、それは颯真がすでに花那の記憶が戻っている事を知っているということだ。一度……二人の家を出た花那と、それを黙って見ていることしか出来なかった颯真。
契約という形を自分から提案した彼は、花那に自分を愛してくれとは言えないでいる。それと同時に颯真が彼女を愛しているという言葉も伝えられないまま。
それでも精一杯想いを伝える努力はするつもりだった。今すぐその細い手首を掴んで引き寄せ、華奢な身体を抱き締めてしまいたい気持ちも押し殺して。
「……やっぱり、気付いてたのね。それなのに、何故?」
花那は重ねていた両手を固く握って、颯真へと尋ねた。本来ならすでに終了している契約期間、記憶が戻ったならば花那をあの家に置いておく理由などなかったはずなのに。
今さら自分を失いたくないという颯真の想いが、花那を戸惑わせる。
「俺はこの結婚にも花那にも何の不満も無かった。だが君はそうでなかったことに全く気付いてなかったんだ。あの日、君があの家からいなくなってしまうまで」
「……そうだったんでしょうね、颯真さんは」
だが花那はそうではなかった。少しでも早く颯真を解放してやりたいという気持ちもあったが、愛されないまま彼の傍にいるのが辛くなっていた。
いつまでも言えない想いを抱え続けることに疲れてしまって。だから逃げた、契約終了という言葉を使って。