セカンドマリッジリング【コミカライズ原作】
「……そんな顔もするんだな、君は」
熱くなった頬を両手を当てて冷まそうとする花那を、颯真は横目で見ながらそう言った。そんな顔も、という事はやはり颯真は花那と仲睦まじい夫婦ではなかったのかもしれない。
ならばどんな顔の花那なら見たことがあるのか、とは聞けなかった。聞いてしまえば自分が一番知りたくないような話を聞くことになるかもしれない。
「いろんな顔をするわよ、私にだって感情があるんだから」
「そうだな、花那の言う通りだ。俺がきちんと君と向き合っていなかったから知らなかった、ただそれだけの事で」
颯真の言葉に花那はどう返事をしていいのか分からない。彼は今までの自分を後悔しているように見えたし、これから先は変えていきたいという意志を感じられた。
でも今の花那には二人のそんな記憶はないわけで……
「ねえ、颯真さん? 私達ってどうしてこんなにも……きゃっ!」
飛び出してきた自転車を見て、颯真が急ブレーキを踏む。ほんの一瞬の出来事だったが、花那はそれを見て酷く動揺した。
「大丈夫か、花那?」
「ええ、ごめんなさい。なんだか頭の中によく分からない映像が浮かんで……」
颯真が助けた事故、そして先日の交通事故と花那は二度もショックな出来事に巻き込まれている。もしかしたらさっきの急ブレーキが彼女を混乱させているのかもしれない。
そう思った颯真は車を近くのパーキングへと止めると、ドアを開け外に出た。
「ここからは歩いていける距離だ、少し散歩のつもりで行ってないか?」
「颯真さん……ええ、そうしましょう」
花那はそんな颯真の気遣いを嬉しいと思い、車外に出ると颯真の隣に立って歩きだした。