セカンドマリッジリング【コミカライズ原作】
しかし困ったことに花那が今日選んだサンダルはヒールが高めで、背の高い颯真の歩幅に合わせて歩くのは難しい。しかも外灯の明かりだけでは足元が心許なく、花那は少し迷って颯真に話しかけた。
「あの、貴方の腕に摑まらせてもらってもいいかしら? このままでは転んでしまいそうで怖いの」
普段から余程の事が無いと颯真は花那に触れようとはしない。そんな夫に頼むのは気が引けたが、このままでは本当に転んでしまいかねない。
そんな花那の胸の中を知りもしない颯真は、一瞬だけきょとんとした表情を見せた後に戸惑いながら腕を差し出した。
――夫婦なら当たり前のことが、私達にはそうじゃないのよね?
少しずつではあるが、花那は自分たちが普通の夫婦とは違う事に気付き始めていた。その理由まではまだ分からない、颯真に尋ねてみても答えてはくれない気がする。
花那から抜け落ちた記憶、それがどんな意味を持つのか。すべてを知るにはもっと時間が必要なのかもしれない。
「ありがとう、颯真さん」
出されて腕に自分の腕を絡ませれば、他人からは仲の良い恋人同士に見えるだろう。そう思えば颯真も花那も少し気分が良くなった。
たとえ今はまだ、お互いが相手の本当の気持ちをほんの少しも理解していなかったとしても……