セカンドマリッジリング【コミカライズ原作】
「美味しい……このドレッシングも、私の好みの味だわ」
前菜のアボガドとエビのカクテルサラダの美味しさに、沈んでいた花那の気分が上がる。
先ほどまで良くない事ばかりを考えていたのに、美味しいものを食べると自然と気持ちが上向きになるから不思議だ。
そんな花那の様子を見て黙っていた颯真もホッとした表情を浮かべる。
「なら良かった。もし今の君の好みと合わなければ、どうしようかと思っていたから」
今の花那がこのレストランの料理を美味しいと思わなければ、過去に颯真と来た自分もこの店の料理を好きではなかったことになる。
けれどそんな心配は杞憂で、このレストランの料理はどれも花那の口に合っていた。
花那が出される料理を綺麗に残さず食べていると、颯真がそんな彼女をじっと見つめている。
「どうしたの? もしかして私の口の周りにさっきのソースがついてたりする?」
そうがっついたつもりはなかったが、美味しくて気を使い忘れてしまってた。心配になった花那がバッグから鏡を取り出そうとすると……
「いや、君がとても美味しそうに食べるから」
「ええ、とても美味しいから。前の私はそうじゃなかったの……?」
過去の花那も今のは花も同じ人間だ、好みの変化もないのに前の彼女とは反応が違っていたらしい。
しかし過去の事を思い出せない花那にそこまでの事は分かるわけもなく。