セカンドマリッジリング【コミカライズ原作】


「ここが、私の好きだったレストラン? 想像してたのよりずっと可愛らしいのね?」

 少し町外れにあるそのレストランの外観は、花那(かな)が思っていたのよりも可愛らしいデザインだった。可愛い物好きな女の子が喜びそうなメルヘンな建物の作りに、花那は少しだけ戸惑った。

「……ああ、君がこの店がいいと言ったんだ。何がそんなに気に入ったのかと聞いたら、はぐらかされてしまったが」

 記憶にない頃の花那が何を考えていたのか、自分のことのはずなのにまだ分からない。
 花那の好みは大人っぽくシンプルなものが多い、このレストランはどう考えても彼女の好みとは違っていた。

 ――どうして前の私はこの店を選んだの? その時の私の考えに颯真(そうま)さんが関係したりするのかしら?

「花那、それじゃあ行こうか?」

「……ええ、そうね」

 ドアを開ければ店内も可愛らしいもので溢れている、まるでおとぎ話の国にでも来たかのように。

「いらっしゃいませ、深澤(ふかさわ)様。お待ちしておりました」

 この店のコンセプトは不思議の国なのだろうか、執事のような恰好をした男性が丁寧に二人を席まで案内してくれる。
 少し騒がしい感じの内装だけど、見ている分には楽しいと花那は思っていた。

「いつもの席で、いつものメニュー……でよろしかったですよね」

「ああ、いつものように頼む」

 テーブルに着くと颯真は執事の男性にそう言って、メニューも見らずさっさと注文を済ませてしまう。

 ――五年間ずっと同じ店で、ずっと同じメニュー? 本当に私らしくない事ばかり。

 好き嫌いの無い彼女は、レストランに行くと毎回違うものを頼むことが多い。それなのに、ここではずっと同じメニューを選んでいたという。
 分からない事は増えるばかりで、花那は思ってたよりも記憶を取り戻すのは大変そうだと感じていた。


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