セカンドマリッジリング【コミカライズ原作】
「でもジッと見られても食べにくいわよ……」
小さな声でそう言うのが精いっぱいだった、花那だって颯真の事を意識してないと言えば嘘になる。
そうならないように気を付けていても、心までもが言うことを聞いてくれるわけでもないのだから。
「じゃあ俺も何か注文する、それならいいだろ?」
そう言う問題じゃない、花那はそう思ったが颯真の言葉に渋々頷いて見せた。颯真が自分の注文したものを食べている間は、見られずに済むと思って。
それなのに、注文したデザートが届いたと同時に颯真は……
「季節限定商品だそうだ、これも少し食べてみないか?」
そう言って颯真は栗のムースをスプーンで掬い、花那の口元へと差し出した。
まさか真面目な夫がそんな手を使ってくるとは思ってなくて、花那は唖然とする。真剣な顔でスプーンを向けられると、口を開けるしかなくなってしまう。
「あ、いただきます……」
また間接キスになるのではないか? そんな事を考えながらも口にした栗のムースはとても美味しかった。栗の味が濃厚なのに甘過ぎず、ふわりと香るラム酒が良い。
「どうだ、花那?」
「ええ、すごく美味しいわ」
そう言って頬に手をあてていると、そんな花那の仕草を颯真がじっと見ている事に気付く。
そんな颯真の表情も、いつもより柔らかな気がして花那も彼をじっと見つめ返してみた。