セカンドマリッジリング【コミカライズ原作】


「これでしたら、すぐにお直し出来ますよ。こちらでお待ちになられますか?」

 愛想のいいジュエリーショップのスタッフに笑顔でそう言われて、颯真(そうま)花那(かな)は二人で頷いてみせた。花那は母の形見が直るのをこの場で待っていたかったし、颯真は花那のそばについていてやりたいと思っていた。
 小さなカフェスペースへと案内されて、椅子に座るとガラスケースのアクセサリーが目に入る。しばらくは離れた場所から眺めていたが、なんとなく気になって立ち上がりケースに近寄った。

 小さな花模様のイヤリングは、前に颯真が花那にプレゼントしてくれた花に似ている。そんなことを考えてジッとケースの中を覗いていると……

「欲しいのか、そのイヤリング」

 いつの間に傍に来たのか、花那のすぐ後ろに颯真が立ってイヤリングを眺めていた。たくさんあるアクセサリーの中から同じものを見つけるなんて、と花那は少し驚いた。

「そう言うわけではないけれど、よくあのイヤリングを見ているってわかったわね」

「……あれが、君に一番似合いそうだったから」

 そんな颯真の言葉にテレてしまったのか、花那は無言になってしまう。真面目な性格の颯真がお世辞をポンポン言えるような人間ではないことは彼女もよく知っている。
 その言葉は間違いなく颯真の本心で、花那には可憐な花が似合うと思っているのだろう。何も返事が出来ないでいる花那を見て、颯真は少しだけ悪戯心が湧いた。

「もしかしてテレているのか、花那? 顔が少しだけ赤い、心配だからこっちを向いてくれ」


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