ひとつ屋根の下、憧れモテ王子は甘い愛を制御できない。
「ちょっと、山口くーん?」
「わーわーうるせぇーな。売店で白井のその腹満たすもの買いに」
「え、今、一応授業中だよ?」
「白井、変なとこ真面目だなー。こういうときの授業なんてみんな好き放題やってんだよ。ほら」
山口くんが顎で指した方に目を向ければ、
廊下で女の子たちが輪になってお菓子を食べていたり、スマホで自撮りをしていたり。
当日着るんであろう衣装を身に纏ってスマホから流している曲に合わせて踊っている隣のクラスの生徒もいて、
廊下は普段の休み時間よりもうんとにぎやか。
「おぉ、なんか、青春!って感じだね!」
「うちの学校、学園祭は2年に1回だから俺らの学年は最初で最後の学園祭だし、みんな浮かれてるんだよ」
「なるほど。だから山口くんも浮かれて作業サボる不良になってしまったのか」
「白井って一言も二言も余計だよな。お前の腹に付き合ってやるって言ってるんだろ?」
「えー、山口くんがサボりたいから私のお腹を口実にしてるだけじゃん!」
「お前ホント──」
「あっ」
山口くんとわーわー言い合っていると、こちらに歩いてくる織くんの姿が見えて思わず声が出た。
廊下歩いているだけですこぶるカッコいいなんて何事だ。