エリート脳外科医は政略妻に愛の証を刻み込む
「十分でオペ室に入ります。麻酔を始めるよう麻酔科の先生に伝えてください」
緊急呼び出しは外科医の宿命。
医師を志した時から覚悟はできている。
けれども残念な思いは消せない。
(よりによって、こんな大事な日に……)
携帯電話をポケットに戻した雅樹に、「お仕事ですか?」と友里が顔を曇らせて問う。
「ああ。申し訳ない。救急搬送されてくる患者のオペに入らないといけないんだ。この埋め合わせは後日必ずする」
だから離婚するとは言わないでほしいと、雅樹は心の中で願う。
友里が眉を寄せているので、妻より患者を優先するのかと呆れていると思ったのだ。
けれどもそうではなく、患者を心配しての表情であったようだ。
「謝らないでください。脳外科医の妻ですもの、こういうのはあると思っていました。雅樹さん、早く。助けてあげてください。命を救ってきてください。それができる雅樹さんを尊敬しています」
「友里……」
雅樹はぎゅっと強く友里を抱きしめた。
それから自宅を走り出る。
病院までは走れば三分ほど。
緊急呼び出しは外科医の宿命。
医師を志した時から覚悟はできている。
けれども残念な思いは消せない。
(よりによって、こんな大事な日に……)
携帯電話をポケットに戻した雅樹に、「お仕事ですか?」と友里が顔を曇らせて問う。
「ああ。申し訳ない。救急搬送されてくる患者のオペに入らないといけないんだ。この埋め合わせは後日必ずする」
だから離婚するとは言わないでほしいと、雅樹は心の中で願う。
友里が眉を寄せているので、妻より患者を優先するのかと呆れていると思ったのだ。
けれどもそうではなく、患者を心配しての表情であったようだ。
「謝らないでください。脳外科医の妻ですもの、こういうのはあると思っていました。雅樹さん、早く。助けてあげてください。命を救ってきてください。それができる雅樹さんを尊敬しています」
「友里……」
雅樹はぎゅっと強く友里を抱きしめた。
それから自宅を走り出る。
病院までは走れば三分ほど。