エリート脳外科医は政略妻に愛の証を刻み込む
手術着に着替えて手指を消毒し、手術室に入ったのは、電話で伝えた通りわずか十分後であった。
患者はすでに手術台に寝かされて、麻酔科の医師が気管挿管し、看護師たちが必要な器具を並べていた。
看護師のひとりが、患者の家族から聴取した既往症を読み上げる。
それを聞きつつ器具を点検し、足りていないものを別の看護師に指示した雅樹は、おどおどしているもうひとりの医師に声をかけた。
「君が土井先生?」
「は、はい」
彼は研修医二年目の土井。
執刀補助につくためここにいる。
指導医となる雅樹とは初対面で、それというのは華衣と交換で北海道のとある総合病院から来たばかりであるからだ。
友里に嫌がらせをした華衣の処分は、系列病院への異動。
減給も訓告さえもない。
甘い処分だが、華衣の医師人生に傷をつけたくないと、お人好しな友里が頭を下げて理事長に頼み込んだ結果である。
「香坂先生、よろしくお願いします」
「ああ。土井先生は、開頭クリッピング術の経験は?」
手を休めず、淡々と問う雅樹。
患者はすでに手術台に寝かされて、麻酔科の医師が気管挿管し、看護師たちが必要な器具を並べていた。
看護師のひとりが、患者の家族から聴取した既往症を読み上げる。
それを聞きつつ器具を点検し、足りていないものを別の看護師に指示した雅樹は、おどおどしているもうひとりの医師に声をかけた。
「君が土井先生?」
「は、はい」
彼は研修医二年目の土井。
執刀補助につくためここにいる。
指導医となる雅樹とは初対面で、それというのは華衣と交換で北海道のとある総合病院から来たばかりであるからだ。
友里に嫌がらせをした華衣の処分は、系列病院への異動。
減給も訓告さえもない。
甘い処分だが、華衣の医師人生に傷をつけたくないと、お人好しな友里が頭を下げて理事長に頼み込んだ結果である。
「香坂先生、よろしくお願いします」
「ああ。土井先生は、開頭クリッピング術の経験は?」
手を休めず、淡々と問う雅樹。