エリート脳外科医は政略妻に愛の証を刻み込む
考えただけでキャパオーバーに陥りそうで、友里は無意識に自分の体を強く抱きしめる。

「俺が怖い?」

雅樹が静かな声で問う。

「怖いのは、雅樹さんじゃなく、たぶん、経験がないからです……。あの、本当に……?」

今夜、本当に体を重ねるつもりかと、友里は消え入りそうな声で尋ねた。

「私たち、本当の夫婦じゃないのに……」

愛情がないということを言いたかったのだが、「婚姻届けは提出済みだが」と淡白に指摘された。

頬に触れていた彼の手が、友里の左手を持ち上げる。

「結婚指輪もしている。ほら、俺もだ」

「あ……」

内側にダイヤをはめ込んだお揃いのプラチナリングが、ふたりの左手の薬指に輝いている。

これは半月ほど前に、ふたりで買いにいったもの。

職場では結婚を秘密にしたいためつけられず、帰ってきてからはめている。

雅樹の場合はそれに加えて、指輪をしていては医療行為ができないという事情があった。

面倒だろうに、部屋にしまい込まずに、帰宅時には指輪をして帰る雅樹。

どういう気持ちでそうしているのかはわからないが、友里は彼の手を見るとくすぐったい喜びに包まれるのだ。

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