エリート脳外科医は政略妻に愛の証を刻み込む
ふたりの寝室は別々で、ここは雅樹の方。

帰宅時間が遅い雅樹が友里の眠りを妨げないようにと、これまでベッドを共にしていない。

器用にドアを開けた雅樹を、友里は抱えられたままの姿勢で慌てて止めようとした。

「雅樹さん、私、初めてなんです!」

だから心の準備時間が必要だと言いたかったのだが、「へぇ、嬉しい申告だな」とニヤリとされてしまった。

十二畳ほどの部屋の窓際にダブルベッドが置かれている。

その中央に座らされて、友里はおろおろする。

彼がつけたベッドランプのオレンジ色の明かりが、ガウンの胸元を握りしめる友里を、暗闇の中に浮かび上がらせていた。

コートを脱いだ雅樹がベッドの縁に腰かけて、友里の頬に手を伸ばした。

友里がビクッと肩を揺らす。

「こっち見て」

素直に従い、揺らした瞳に彼を映した友里はハッとした。

クールな印象の切れ長の彼の目は今、情熱的に熱を帯びて潤んで見える。

(こんな顔の雅樹さん、見たことない……)

つられるように、友里の頬が熱くなった。

子供ではないのだからこの先、なにがあるのかはわかっているつもりだ。

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