エリート脳外科医は政略妻に愛の証を刻み込む
「俺は今、君を傷つけたばかりだよ。痛みも喜びも分かち合おう。夫婦だから」

友里の戸惑いを消そうと目論んでいるかのように、雅樹は何度も『夫婦』という言葉を強調して口にした。

(私たちは夫婦……)

突かれるたびに痛みを覚えるが、それは徐々に引いていき、代わりにふわふわとした夢心地が広がる。

(気持ちよくて、もうなにも、考えられない……)

ズンズンと刻まれるリズム。

ふたりの汗と体温、早い息遣い。

そして耳には、諭すような彼の声。

「君は俺の妻なんだよ」

今、この時だけ、友里は戸惑うのを忘れている。

快楽に流され、甘く呻いて縋りつけば、雅樹が強く抱きしめ返してくれた。





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