エリート脳外科医は政略妻に愛の証を刻み込む
お弁当のことに気を逸らして力を抜いていた友里を、雅樹が貫いたのだ。

「入ったよ」

「雅樹さん……」

不意打ちとは少々ズルいが、それも友里を思い遣ればこそで、非難はできない。

友里の意識はたちまち繋がる部分に集中し、再び動揺の中に落とされた。

(夫婦なら当然の行為。でも私たちは気持ちが通い合っていない。これで本当によかったの……?)

友里が顔を曇らせたので、雅樹が心配する。

「痛い?」

「今は、大丈夫です」

充分に潤っていたため、想像よりは挿入の痛みが軽く済んだのではないだろうか。

「雅樹さん、私、間違ったことしてませんよね……?」

そう問いかけたことで、友里がなにを戸惑うのかが伝わったようだ。

雅樹がキスを落とし、甘い声で囁く。

「俺たちは夫婦。なにも間違えていない」

(愛情のない夫婦でも……?)

雅樹がゆっくりと動きだしたことで、考える余裕を失った友里は、シーツに爪を立てた。

すると、その手を彼の背に回される。

「しがみつくなら俺にして。かきむしってもいい」

「雅樹さんを傷つけるなんて、できません」

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