エリート脳外科医は政略妻に愛の証を刻み込む
「恥ずかしがる友里は可愛いが、俺に慣れたという理由で平気な顔をしているなら、それはそれでいい。その分だと、濃厚でいやらしいキスをしても大丈夫そうだな」

「えっ?」

たちまち顔を真っ赤に染めた友里を見て、雅樹が目を細めた。

「冗談だよ」と友里の頭をひと撫でし、先に立ってリビングへと歩き出す。

「早く帰ってこられたから今夜は飲むか。友里も付き合って」

「は、はい。おつまみ用意しますね」

「ありがとう」

夫婦の平和で何気ない会話は、いつもなら友里の心を温めてくれるのに、今日は虚しく感じる。

雅樹の背を追いながら、音に出さないようにため息を漏らした友里であった。



深夜一時を回り、友里は雅樹のベッドに誘われた。

優しくシーツに押し倒され、組み敷かれる。

ネグリジェの衿のリボンを解かれると、不安が押し寄せて、彼の胸を押してしまった。

「友里?」

怪訝そうに見られ、友里は目を泳がせる。

「あの、今夜はやめておきませんか……?」

「なぜ?」

「そういう気分じゃなくて……」

雅樹がどいてくれたので、友里は身を起こした。

ベッドの上で、ふたりは向かい合って座る。

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