エリート脳外科医は政略妻に愛の証を刻み込む
「昼間はすまなかった」

「え……?」

なんの謝罪かと目を瞬かせてしまったら、雅樹がフウと息をつく。

「カルテのこと。厳しい言い方をしたと反省していたんだ」

謝られた理由を友里はようやく理解した。

優先順位が違うと叱られたことを忘れていたわけではなく、自分に非があるので注意されて当然だと思っていたからだ。

友里に謝りたくて、雅樹は仕事を無理やり切り上げ、急いで帰ってきたようだ。

疲れているその顔に、友里は慌てた。

濡れている手を拭くと、キッチンを回って雅樹に駆け寄る。

「私の方こそ、ご迷惑をおかけしてすみませんでした。雅樹さんは少しも悪くないですよ。謝らないでください」

「いや、わけも聞かずにあんな言い方をすべきではなかった。友里はいつも真面目で一生懸命だ。今日はなにか問題があったんだろう?」

雅樹に気を使わせて申し訳ないと思う反面、嬉しくも思っていた。

雅樹にとって自分がどうでもいい存在なら、こんな風に急いで帰ることはないと思うから。

友里は微笑んで、雅樹にダイニングテーブルの椅子を勧めた。

「お夕食、まだなんでしょう?」

「ああ……」

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