エリート脳外科医は政略妻に愛の証を刻み込む
「食べながら話しましょう。座ってください。トマトリゾットと鶏肉のソテーでいいですか? すぐできますので。雅樹さんが早く帰ってくるなら食べずに待っていればよかったです」

手早く雅樹のための夕食を作り、友里はダイニングテーブルの雅樹の向かいに座る。

「美味しいよ」と食べてくれる彼を見ながら、バタバタしていた昼前後のクラーク業務のことを話した。

「そうか、大変だったな」と雅樹は労ってくれて、スプーンを止めてなにかを考えている顔をする。

そしてこんな提案をした。

「病棟クラークを増やせないか、事務長と理事長に相談してみよう」

「私のためにそこまでしなくても……」

「いや、なんとかしなければと思っていたんだ」

今年に入って病院の夜間当番の回数が増えた。

緊急入院となるケースも多いため、その日は病棟クラークも夜勤。

友里は夜勤をしたことはないが、山内のようにあちこちの病棟クラークをかけ持つベテランが夜勤もしている。

以前は日中、完全二人体制であったのに、そのせいでひとり勤務の時間帯もできたのだ。

友里以外のクラークも大変そうである。

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