エリート脳外科医は政略妻に愛の証を刻み込む
理事長令嬢だから遊び半分で働きだしたのでは……そのように揶揄されていたのは、雅樹も知っている。
けれども友里は真面目で一生懸命。謙虚で素直でもある。
すぐに周囲も見直して、彼女を仲間として受け入れていた。
看護師たちが『友里ちゃん』と呼び、可愛がっているのを見て、雅樹は感心していたのだ。
彼女を例えるなら、こっそり岩陰に咲く百合の花。
決して偉ぶることはなく、美人を鼻にかける様子もなく、常に控えめで周囲を気遣う性格を、気持ちがいいと雅樹は思って見ていた。
それに、お人好しでもある。
ある時の友里は――。
入院している中年女性患者の田中は話し好き。
クラークのカウンターに頬杖をついて、友里を相手に世間話をしていた。
『それでね、うちの息子ったら、部活が忙しいから見舞いにはいけない。メールでいいだろって言うの。白状よね~。でも本当は優しい子なのよ。それに臆病。きっと母親が弱っている姿を見たくないんだと思うのね。去年の母の日には料理を作ってくれて――』
友里は『そうなんですか』『素敵な息子さんですね』などと、真剣に話を聞いてあげていたが、その眉尻は下がっていた。
けれども友里は真面目で一生懸命。謙虚で素直でもある。
すぐに周囲も見直して、彼女を仲間として受け入れていた。
看護師たちが『友里ちゃん』と呼び、可愛がっているのを見て、雅樹は感心していたのだ。
彼女を例えるなら、こっそり岩陰に咲く百合の花。
決して偉ぶることはなく、美人を鼻にかける様子もなく、常に控えめで周囲を気遣う性格を、気持ちがいいと雅樹は思って見ていた。
それに、お人好しでもある。
ある時の友里は――。
入院している中年女性患者の田中は話し好き。
クラークのカウンターに頬杖をついて、友里を相手に世間話をしていた。
『それでね、うちの息子ったら、部活が忙しいから見舞いにはいけない。メールでいいだろって言うの。白状よね~。でも本当は優しい子なのよ。それに臆病。きっと母親が弱っている姿を見たくないんだと思うのね。去年の母の日には料理を作ってくれて――』
友里は『そうなんですか』『素敵な息子さんですね』などと、真剣に話を聞いてあげていたが、その眉尻は下がっていた。