エリート脳外科医は政略妻に愛の証を刻み込む
外来患者の診察にはそれほど時間はかからなかったが、友里の退勤時間までに病棟に戻ることができなかったので、様子が気になって仕方なかった。
それで仕事を他の医師にお願いしたり、明日に回したりと、無理やり終わらせたのだ。
玄関を開けたのは十九時二十分。
エプロン姿の友里がパタパタとスリッパを鳴らし、玄関まで駆けてきた。
その目は赤く、少々潤んでいて、涙を拭ったばかりだと推測できた。
それでも友里は無理して笑顔を作っている。
「雅樹さん、お疲れ様でした。こんなに早く帰れる日もあるんですね。嬉しいです。今、お夕飯の支度をしていて、もう少し待ってくださいね。今日は雅樹さんの好きなエビのチリソースと――」
健気な友里の笑顔に雅樹は胸が締め付けられる。
手を伸ばして友里の頬に触れると、残っていた涙の筋を指で拭いた。
「あっ、これは、玉ねぎが――」
慌ててごまかそうとする友里を、雅樹は両腕の中に閉じ込めた。
おろおろと目を泳がせる彼女に静かに問う。
「つらい? 俺と結婚しない方がよかった?」
友里は驚いたように目を丸くする。
「どうしてそんな話になるんですか?」
それで仕事を他の医師にお願いしたり、明日に回したりと、無理やり終わらせたのだ。
玄関を開けたのは十九時二十分。
エプロン姿の友里がパタパタとスリッパを鳴らし、玄関まで駆けてきた。
その目は赤く、少々潤んでいて、涙を拭ったばかりだと推測できた。
それでも友里は無理して笑顔を作っている。
「雅樹さん、お疲れ様でした。こんなに早く帰れる日もあるんですね。嬉しいです。今、お夕飯の支度をしていて、もう少し待ってくださいね。今日は雅樹さんの好きなエビのチリソースと――」
健気な友里の笑顔に雅樹は胸が締め付けられる。
手を伸ばして友里の頬に触れると、残っていた涙の筋を指で拭いた。
「あっ、これは、玉ねぎが――」
慌ててごまかそうとする友里を、雅樹は両腕の中に閉じ込めた。
おろおろと目を泳がせる彼女に静かに問う。
「つらい? 俺と結婚しない方がよかった?」
友里は驚いたように目を丸くする。
「どうしてそんな話になるんですか?」