エリート脳外科医は政略妻に愛の証を刻み込む
そう言った後、なにかに思い当たったように「あっ」と声を漏らす。

「違うんです。ミスを重ねてしまうのは私の集中力が足りないせいで……。色々と悪く言われることを気にしていたからではないんです」

「ミス?」

陰口については華衣から聞いたばかりだが、ミスを重ねている話は知らなかった。

問い返した雅樹に、友里は余計なことを言ってしまったとばかりに目を逸らした。

「友里、教えてくれ。なにがあった?」

「ええと……」

言いにくそうにしながらも、友里は正直に打ち明けてくれた。

最近、伝票やメモ類をよく紛失してしまうことを。

パソコン入力でもうっかりミスで、保存されていなかったことがあったそうだ。

看護師長に何度か注意され、自分の不出来さが情けなくて落ち込んでいたのだという。

「ごめんなさい。夫婦であることを知られてしまったから、私のことで雅樹さんも恥ずかしい思いをしますよね。気をつけているつもりなんですけど、なぜかすぐになくしてしまうんです……」

友里は自分に落ち度があるのだと信じ込んでいる様子。

けれども雅樹は疑問に思った。

「そんなになくなるのは、おかしいな……」

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