エリート脳外科医は政略妻に愛の証を刻み込む
嫌がらせの可能性を考えた雅樹は、友里の肩を掴んで問う。

「物がなくなったと気づく前の状況を教えてくれ」

「え……?」

やけに真剣な目をする雅樹を、友里が不思議そうに見ていた。



翌日、少し早めに昼休憩から戻った友里は、クラーク用のパソコンを前にして、「えっ」と驚きの声を漏らした。

また伝票がなくなっているのだ。

(食事伝票、たしかにここに置いたのに、どうして……?)

さすがにおかしいと友里は気づく。

病棟スタッフを疑いたくないが、恐る恐る振り向けば、医師デスクの華衣と目が合った。

立ち上がった華衣が、友里に歩み寄る。

「またなにかなくしたの? 一緒に探してあげるわ」

「いえ、先生にご迷惑をかけるわけには……」

「でもないと困るでしょ?」

友里が断ったにも関わらず、華衣が後ろに振り向いて大きな声で言う。

「誰か、手の空いている人いる? 食事伝票がないんだって。探すのを手伝ってほしいんだけど」

友里は疑惑の目を華衣に向けていた。

(私、なにをなくしたのか、まだ言っていないのに。もしかして華衣先生が……?)

友里の性格上、問いただすことはできそうにない。
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