蒼月の約束
第十四話


(あ、この感覚知ってる)


白い空間に一人佇みながら、エルミアは頭の中で呟いた。


(私、また王子と寝てるのか…)


森を出てからの記憶がないが、この空間に一人で浮いていることがそれを証明している。


【エ…―ミア…】


またいつもの懐かしい声が、自分の名前を呼んでいるのが聞こえた。

(精霊の書、見つけたよ)

見つからないと分かっていても、いつものように声の主を探してしまう。


【…の海…行き―…】


(待って、よく聞こえない!)


【エル…―海へ…―】


前回同様、テレビの砂嵐のようなザーザーという耳障りな音が邪魔して、聞こえない。

【あ…―記憶…―消え…前…】


(待って、もう一度!)


しかし、そう叫んだところで、もう不思議な声が聞こえることはなかった。


「…もう一度」


そう口に出しながら、エルミアは目を覚ました。



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