蒼月の約束
図書室へ行くと、すっかり顔色のよくなった王子とグウェンが、巻物を床に広げて座っていた。
その隣には、サーシャとナターシャもいる。
二人が入ってきたのを見ると、王子は柔らかく微笑んだが、グウェンの表情は硬かった。
「よく、見つけてくれたな」
エルミアが隣に座ると、ご褒美だと言わんばかりに王子はエルミアの頭を撫でた。
初めて褒められたことに、心がこそばゆくなる。
しかしその様子を険しい表情で見ているグウェンがいるせいで、素直に喜べない。
「解読は出来そうですか?」
いつもはため口が多いのに、なぜか恐縮してしまい敬語が出てきてしまう。
一瞬、訝し気な顔をした王子だが、すぐに首を振った。
「お前の予言のみだ。黄金の羽根と、古代花。それくらいしか、今のところは分からない」
そして、エルミアに向き直り、瞳をのぞき込むようにしていった。
「今回も何か聞こえたか?」
王子と一緒に眠ると予言が聞こえるのは、もはや全員が知っていることだが、王子が興味を持つのがそこだけだと思うと、悲しんでいる自分もいる。
「海、とだけ…」
どんどん聞こえづらくなっている、とは口に出せない自分がいることに驚いた。
その理由がないと、一緒にいれないと、ふと気づいてしまったからだろうか。
「この辺りの海と言いますと…」
リーシャが、どこからか持ち出して来た地図を広げて見せた。
「このマーメイド岩がある、ここでしょうか」
こうやって、この世界の地図を見ると、意外と小さいようで大きくも見える。
「そこまでどれくらいで着くの?」
「太古の森よりは、近いかと…」
リーシャがエルミアに言った。
「まずは、ここに行ってみるしかなさそうだな」
王子が考え込む仕草で言った。