蒼月の約束
もはや病気レベルの仕事中毒者であるリーシャとナターシャが、深い眠りにつくまで子守歌をうたってあげ、自室に戻った頃には、エルミア自身もなぜか疲れていた。

「心配する方も疲れるのね…」

エルミアは真っ暗の部屋に戻り、月明りを頼りにベッドまで歩いて行く。

それから、ふかふかの布団にくるまって静かに目を閉じた。

みんなが無事に帰って来てくれて、数日ぶりに安心して眠れそうだ。



ふと近くに人影を感じて、エルミアは薄目を開いた。

自分が夢を見ているのか分からないが、いつの間にか目の前で王子が横になっている。


「朝には出て行く。頼むから少しだけ…」

王子は、エルミアの方を向きながら枕に顔を埋めた。

眠気に逆らえないエルミアは、そのまま深い眠りへと落ちて行った。




【エルミア…】

ああ、やっぱり夢じゃなかった。王子が来たのは…


この予言の声が来たせいで、自分のベッドに何が起きているのか自覚せざるを得ない。

王子は自分をよく眠れる枕ほどにしか考えていないのだろう。

(少しずつ前に進んでいるよ)

もはや、この夢の中が今の達成度を伝える役割になりつつあるエルミアは、もはや人陰を探すこともしなくなった。

(一つめのアイテムは貰えたし、あと三つだね)

いつもはしつこくあれしろ、これしろという予言が今日は静かだ。

(もうヒントはないの?)

声が聞こえて来ないことに不信感を覚えたエルミアは聞いた。



【助けて…。
エルミア…どうか助けて。
王子を、世界を…

そして私を】 



そして、ぶつっと電話が切れるような音がして、エルミアは目を覚ました。


体中に大量の汗をかいていた。


もう遅いと分かっていても頭の中で「どうしたの?」と問いかけてみる。

もちろん何の返答もない。




そして、これが最期の予言だということも何となく理解していた。


< 164 / 316 >

この作品をシェア

pagetop