蒼月の約束
「予言と一緒で、決められた人にしか伝わらないからです」
王子の言葉を継いで、グウェンが言った。
グウェンもまた暗い顔をしている。
「予言を受け取れるのは、この世界において四人だけ。
そして、おそらく精霊の書について知っているのは、私の父親と、あと三人。
残念ながら、王がいない今、私たちエルフは直接予言を受け取ることが出来なくなってしまった」
「その精霊の書って何?重要なものなの?」
隣に座っているリーシャに聞いた。
「精霊の書は…四大精霊について書かれた文書と言われています」
「本当に実在するかも、私たちにとっては疑わしいが」
室内がしんと静まり返った。
物事が深刻なのは、この空気で手に取るように分かる。
ただそれが何を意味するのか全く分からない立場のエルミアは、ここからさっさとここから抜け出したい衝動に駆られた。
「この世界には、精霊が4つ存在する」
表情を読んだ王子が、話し始めた。
「火の精霊、サラマンダー。
水の精霊、ウンディーネ。
風の精霊、シルフ。
そして
土の精霊、ノーム」
目の前の本をめくり、その情報を示す個所を見つけた王子は、本のページをトントンと叩いた。
文字が読めないエルミアは、4つの精霊がイラストで描かれているところを見た。
「これらが、四大精霊と呼ばれるものだ。この精霊たちを呼び出すと、どんな願いでも叶えてくれると言われている。本当に精霊たちを見たものはまだいないが…」
王子の隣に座っていたグウェンは、本を見つめながら言った。
「しかしもし、精霊が女王によって召喚されたら、私たちエルフの国は滅亡するでしょう。彼女の狙いは、この世界、全てを彼女の支配下にすることですから」
またもや部屋に重い空気が漂った。