蒼月の約束
段差を少し下がったところに、赤い絨毯を引き、居心地が良くなるようにといくつかクッションを置いて座っていたのは、王子と、グウェン、そしてサーシャとナターシャだった。
リーシャが先導し、エルミアは、王子の隣に座った。
丸く弧を描くように座り、その真ん中にはいくつかの本が並べてある。
「どうかしたんですか?」
王子と本を交互に見ながら、エルミアは聞いた。
自分がなぜここに呼ばれたのか、全く見当が付かない。
これから何が始まるのだろう。
王子は、手元の分厚い緑色の表紙の本を手に取って言った。
「この間、精霊の書について聞いてきたのは覚えているか?」
スカイブルーの瞳でエルミアを見つめた。
吸い込まれそうな美しすぎる青にエルミアは、思わず顔を逸らして頷いた。
「夢の中で、そう言われただけなんだけど…」
あたかも別の本に急に興味を持ったと言わんばかりに、本を開いてみるが、エルフ語で書かれているのか、はたまた別の言語で書かれているのか、さっぱり分からない。
王子は、本をパラパラとめくった。
「精霊の書について知っている者は、ほとんどいない」
「なぜ?」
エルミアは王子を見つめた。
一瞬、王子の子守歌のような心地よい声に影が落ちたと感じた。