蒼月の約束
「こんな朝早くから、一体どんな用件で?」
王子が民との面会用の正装で、玉座に座っている。
額には金色の飾りをつけており、服装は床を引きずる程の白いマントに金の刺繍。
そして、腰には、表向きには見えないように短剣をさしていた。
何か事が起きた時にはすぐに体勢が整うようにしておかなくては。
王子の前には、数人のドワーフが立っていた。
王ではない人の前では、ひれ伏すものかと、直立の状態でにらみ合っている。
小学生程の身の丈には合わない程長い茶色いひげ。そして、ずんぐりした筋肉質の体格から、力仕事が得意であることが見受けられる。
「あれが、ドワーフ…」
玉座の後ろにあるカーテンから、謁見の間の様子をうかがう。
座っている王子の横には、いつものように威圧的な顔をしたグウェンと、リーシャとナターシャが立っていた。リーシャは顔色を一つ変えずに無表情だが、ナターシャは緊張と興奮のせいか少しばかし頬が紅潮している。
エルフとドワーフの関係性が、この場を見ているだけでも伝わってくる。
やっぱり、サーシャの言う通り、変なことには首を突っ込まない方がいい。
そう思ったエルミアは、くるりと踵を返した。
その時、ドワーフが言った。
「数日前、歌声を聞いた」