蒼月の約束
「お前、名前は?」
「エルミアです…」
「エルミア、予言の娘か」
その予言の娘というのは、どこまでも広まっているようだ。
「さて」
ずっと玉座に座っていた王子が、いつの間にかエルミアの隣に立ち、エルミアの肩を抱えた。
「こんな早朝から、この宮殿まで押しかけて来たのです。それなりの理由をお聞かせ願いますか?」
そういう落ち着きはらった態度が気に食わないんだ、と言いながらドワーフは王子を一睨みし、エルミアに向かって言った。
「俺たちの村は、この森を抜けたずっと先にある。お前さんの歌声を聞いたのは、数日前だ」
肩に乗っている王子の手が気になって、ドワーフの言葉がしっかりと耳に入ってこない。
なんだか、落ち着かない…
「俺たちの村にも、西の女王の呪いがかけられていた。
元気な者は一人もおらず、見つかったら西へ連行されると思うと、みんな恐怖で外へ出られねぇ。
病気のものは寝込み、村はどんどん死に絶えていったよ。
体は生きているのに生気が感じられない、そんなとこだ」
王子の手に力がこもるのが分かり、どうにか手を払いのけようと努力するのを諦めるエルミア。
ドワーフは続けた。