蒼月の約束
「しかし、歌声が聞こえたあの日から、小さな変化が起き始めた。
病気で引きこもりなやつが、不思議と回復し始めたんだ。
もうお先真っ暗だと嘆いていた奴たちが、なぜか少しずつ前向きになっていくんだ。
あの夜は、本当に奇跡のようだったよ。
数日経つと、外に出たい奴ばかりになり、数年ぶりに笑い合いながら、酒を飲んだり、ダンスしたり、生きていて最高の時間になった」
そしてエルミアに向き直った。
「俺は、ドワーフ村の代表として、お前にお礼を言うために来た。はるばるここまでな」
それから、しっかりと頭を下げた。
「感謝している」
それに倣って、後ろの強面の四人も頭を下げた。
「お前が、エルフじゃなくて本当に良かった」
帰り際に、皮肉も忘れないで置いて行くドワーフ達を見送る。
門の近くでドワーフは振り返り、また口を開いた。
「エルミア、何かあれば俺を頼ってくれ。アゥストリの友と言えば、皆優しくしてくれる」
そう言って、手を振った。
エルミアも手を振り返した。
そして、ふと気がついて慌てて叫んだ。
「あ、アゥストリ!この森は…!」
「既に呪いは解けているみたいだぞ。もうビビらなくていいんだ、エルフの王子さま、よ!」
アゥストリの大声が森の中へこだました。