蒼月の約束

「しかし、歌声が聞こえたあの日から、小さな変化が起き始めた。
病気で引きこもりなやつが、不思議と回復し始めたんだ。
もうお先真っ暗だと嘆いていた奴たちが、なぜか少しずつ前向きになっていくんだ。
あの夜は、本当に奇跡のようだったよ。
数日経つと、外に出たい奴ばかりになり、数年ぶりに笑い合いながら、酒を飲んだり、ダンスしたり、生きていて最高の時間になった」


そしてエルミアに向き直った。


「俺は、ドワーフ村の代表として、お前にお礼を言うために来た。はるばるここまでな」


それから、しっかりと頭を下げた。

「感謝している」

それに倣って、後ろの強面の四人も頭を下げた。


「お前が、エルフじゃなくて本当に良かった」


帰り際に、皮肉も忘れないで置いて行くドワーフ達を見送る。


門の近くでドワーフは振り返り、また口を開いた。


「エルミア、何かあれば俺を頼ってくれ。アゥストリの友と言えば、皆優しくしてくれる」


そう言って、手を振った。


エルミアも手を振り返した。

そして、ふと気がついて慌てて叫んだ。

「あ、アゥストリ!この森は…!」

「既に呪いは解けているみたいだぞ。もうビビらなくていいんだ、エルフの王子さま、よ!」


アゥストリの大声が森の中へこだました。


< 63 / 316 >

この作品をシェア

pagetop