蒼月の約束
第十話
森の呪いが解けたという一大ニュースは、宮殿内にあっという間に広がった。
しかし、疑心暗鬼のエルフたちは、中々それを信じようとはしなかったため、王子が体を張って証明すると言い出した。
側近のグウェンが止めたが、ドワーフに負けてられない、とよく分からないことを言い、自身できちんと呪いが解けたことを証明した。
「まずいことになったかも知れない…」
ドワーフたちが、帰ってから数日が経ち、図書館塔で休んでいると、王子とグウェンが慌てた様子でやって来た。
座っていたリーシャ、サーシャ、ナターシャがすっと立ち上がる。
寝転がっていたエルミアも今しがた口に運んだブドウを呑み込みながら、王子が座れるよう場所を作る。
「まずいことと、言いますと?」
リーシャが尋ねた。
エルミアはまだ口をもぐもぐさせている。
「女王に、ミアの居場所が知られたかもしれない」
それから王子は、エルミアを見た。
「呪いを解けるのは、予言の娘しかいないからな」
「でも、女王が狙っているのは精霊の書ではなくて?」
クッションに座りなおし、エルミアは聞いた。
「そこだ。今一番欲しているのは精霊の書だ。しかし、呪いが解けるなんてことはここ何年もなかった。きっと気が気じゃないだろう。ミアを狙ってくる可能性は高い」
王子が口を開こうとすると、グウェンが言った。
「恐れながら…。まずは、精霊の書を、女王より先に見つけることが先決だと言えます。それが相手に取られてしまえば、元も子もありませんから」
グウェンを見ながら王子は頷いた。
「しかし申し訳ありませんが、精霊の書について何も情報が見つけられず…」
うなだれた様子のリーシャを見て、王子は腕を組んだ。
「私も探してみたんだが…」
「聞いたらいいんじゃないですか?誰かに」
エルミアは、首を傾げたまま聞いた。
「だって森の呪いは解けたんだから、外に行けるでしょ?聞きこみに行けば、ここで籠っているより情報は手に入りそうだと思うんですけど…」