蒼月の約束

「一体、どうしたの?」

図書室へ入るやいなや、エルミアは聞いた。

「ここには、ペガサスも普通にいそうだけど…」

この世界には、既に、エルフとドワーフ、そして精霊たちがいる。

もはや、空飛ぶ馬が存在するといっても特別驚かないだろう。

なので、リーシャが「ペガサスはいます」とはっきり言い切った時も、たいして何も思わなかった。


「しかし、黄金の羽根を持つペガサスは、普通のペガサスとは少し違います。
彼らは精霊の使いと言われているんです」


塔に入った瞬間に何かを探し始めたと思ったサーシャが、一冊の本を抱えて戻って来た。

四人は不思議な模様の描かれた赤い絨毯に円を描くように座った。

「精霊の話は、普段の私たちとは、全く縁がないものです。
しかし、ミアさまをお守りするよう王子から命を下された時に学習いたしました」


リーシャが関連のある場所を探そうと本をめくりながら言った。


「ある本によると、精霊の使いを見た翌日に、精霊からの予言はやって来ると言われています。なので、幸運と言われている一方で、不吉とも言われているのですが」


「幸運な予言ばかりじゃないからか…」

エルミアは今しがた広げられた本を見つめた。

「…風。もしかして、黄金のペガサスは、風の精霊の使い?」


文字が読めないので、イラストでなんとか解読しようとする。

風を人間型にしたような生き物と、光る空飛ぶ馬が描かれているので、想像するのは容易い。
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