蒼月の約束

「選ばれた者って?」

エルミアが身を乗り出して聞いた。

「さあな。だが、女王の呪いが効かないお前なら、もしかしたら大丈夫かもしれないな」

ネックレスをちらりと見ながら、冗談交じりで言うアゥストリに思わず目が釘付けになる。

「そう言えば、なんで私が予言の娘だって知っているの?」

笑顔だったアゥストリの顔が、一瞬にして曇った。


「それは…。俺の親父が、予言の受取人(うけとりにん)だからだ」

「そうなの?」

エルミアは驚いて、目を見開いた。

エルフの三人も奇跡的に同じ反応をした。

アゥストリは、あまりエルフの前では口にしたくない、という表情で、エルミアだけに向かって言った。

「しかし、受取人だと西の女王に知られた瞬間、捕らえられ、それきり帰ってこない。もう、何年も前の話だ」

「そうだったの…」

だから、他のドワーフたちは騙されたって言っていたんだ。

「無理して答えなくてもいいんだけど、最後に一つだけ質問いいかな?」

アゥストリは、古い本に鍵をしながら言った。

「なんだ?」

「お父さんは、なんの精霊の受取人だったの?」

目の端で、リーシャが首を振るのが分かった。


エルミアも、これは繊細な問題だから、アゥストリは黙っているかと思った。

しかし、大きなため息を吐いたあと小さな声で言った。

「基本的に、そういう情報は与えてはいけないことになっているが、お前には、助けて貰ったという大きな貸しがあるから、特別だ」


そして、エルミアの耳にこそっと言った。



「土の精霊、ノームだ」


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