幻想館-白雪姫-
「ママ・・・」


えっ・・・今何て?


「ママが悪いんじゃないの」


「どうして?」



由希奈は少女の正面に座り、小さな両手を自分の手で包み込んだ。



この子の手は何て温かく安らぐのでしょう。



由希奈と少女はほのかな白い光におおわれていく。



「ママ・・・」


少女はそっと手を離し、由希奈の頬に触れた。



「ママ、生きて」


生きて・・・



その言葉は、とても力強く由希奈の心を打った。



「わかっていた・・・私は見ず知らずの他人を傷つけてしまった。いくらその人が酷い事を言ったとしても傷つけていいわけがない・・・でもその時は許せなかった・・・」



「ママの中で私は生き続けるから」



もちろん産まれる事のなかった赤ちゃんは、私の中で生き続けるけど・・・。



やっぱりあなたは誰なの?


ママって呼ぶけど


私の赤ちゃんの実体が確認されたのは、エコーで見た時だけ


まだ体さえも完全に人となっていない形


それでも不思議な少女は、私をママと呼び続ける。
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