幻想館-白雪姫-
如月は男が出て行ったのを確認した後、美奈に告げた。



「彼と別れなさい」



美奈は「えっ?」と思った。


「鏡も彼からの・・・ですね。その鏡の縁取りが変だと思いませんでしたか?」


「ええ、若い女性に贈る物としては、何となく悪趣味かなと」


「あの鏡は悪魔の鏡です。あなたは鏡を見る度に優しい心が奪われていた」



普通ならば、こんな馬鹿げた話に耳を傾ける筈はないが、今の美奈なら自然に受け入れられた。



「彼は悪魔だったんですか?」


「たぶん、あなたの意識を操っていたんでしょうね」


「私・・・どうしたら・・・」


「あなたの強い意志で離れる事です」



美奈はしばらく黙って考えていたが、あの少年との約束を果たす事が一番だと思い、彼女は決意した。


生を受ける事が出来なかった赤ちゃんのいつか訪れる未来の為に・・・。
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