妹を溺愛する兄が先に結婚しました
最後のたこ焼きを食べた後、口直しに紙パックのお茶を飲む。


そんな私に、


「楽しかったのは、あいつがいたから……?」

と切なげな声が届いた。


ストローから口を離して隣を見ると、俯く時原の横顔が向けられていた。


「あいつって?」


「んー、名前なんだっけ。サッカー部の……」


「折部くんのこと?……え、折部くんは関係ないよ」


視線が合わないことで、途端に不安に駆られる。


「爽から聞いた。……初恋なんでしょ?前に会った時、何か言おうとしてたよね」


あまりに淡々と言うから、動揺が遅れてやってきた。


「え、あ……、そうなんだ。えーっと、別に秘密にしてたつもりはないんだけど。そもそも、もう過去の話だし。

練習試合で会った時は、謝ろうか迷ってたの」


「謝る?」


ようやく時原がこっちを向いた。


ぎゅっと握り拳を作った私に、話す以外の選択肢はなかった。


時原にする話でもないのだけど、気になるならちゃんと話す。



折部くんが転勤族で転校ばかりしていたこと、

中1の時に転校してしまったこと、

その時に手紙を出すと約束したこと、

出したはずの手紙を兄の部屋で見つけたこと。


折部くんを裏切ってしまったこと。



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