妹を溺愛する兄が先に結婚しました
そんなある日。


「真崎は来るの早いね」


サッカー部の練習試合で他校に来ていた時だった。


その言葉が聞こえて、不意に振り返った。



数人の男子と会話する制服の女子が視界に入って……。

途端にドクンと心臓が脈打つ。


笑う彼女を見た瞬間。



「……真崎?」



思わず名前を口にしていた。


振り返った真崎は、あの時と変わらない。


中1の時は周りに比べて大人びた顔立ちだったから、ようやく年相応になった感じ。



真崎は俺に気付いていないようで、

友達が呼んだ「折部」という言葉を聞いて、ハッとした。


……名前を聞くまで気付かないってことは、過去のことなんて忘れているのだろう。


俺は、ぐっと拳に力を入れて。

あの頃は見せなかった表情を作った。



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