妹を溺愛する兄が先に結婚しました
もうすぐ9月が終わろうかという時。


「結咲のクラスは、喫茶店やるんだって」


「へぇ、楽しみ」


賑やかな教室の中……そんな会話が聞こえてきた。


誘われるように声のした方へ視線を移すと、近くの席で真琴がエリサヤと話していた。


今度の土日に真崎の高校で文化祭があるらしく、真琴とエリサヤの3人で行くという話だ。



再会した時のことは、なかったことにすればいい。

……もう忘れてしまえばいいんだ。


なのに、頭をちらつくのは、俺を引き止めて何か言おうとした真崎の顔。


よせばいいのに。


「俺も行っていい?」


気付けば、口に出ていた。



文化祭に行って、真崎に会って。


……何をしたいのか。

正直、自分でもわからない。


そんな時だ。


「いるじゃん!」


真琴が興奮して声を上げた。


「何が?」

「イケメン!……今の執事」


真崎のクラスメイトを紹介された直後のことだった。


執事……。

つまり、2人いた男子のうちの片方──綺麗な顔立ちの男のことを、真琴は言っているのだろう。


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