妹を溺愛する兄が先に結婚しました
プツンと切れた糸。


「なんでそこまで言わないといけないの。お兄ちゃんだって私に言わないことあるでしょ。……ゆかなさんのことだって」


叫び散らしたい思いをなんとか抑えて、でも強めに言葉にした。


だけどその瞬間、無表情だった兄の顔が歪んだ。


「ゆかなのこと?」


思わず顔を背ける。

だけど……。


「日向に何か聞いたのか?……何を聞いた?」


「……結婚のこと。偽装だって……」


ゆかなさんの名前を出した時点で、誤魔化しきれなかった。


頭を抱えた兄。


「なんであいつ知ってるんだ?……いや、俺が話した、のか?」


独り言のように呟くその言葉から、飲んだ時の記憶がすっぽり抜け落ちていることがわかる。


「覚えてないの?」


「覚えて……ない。他に、何か聞いた……?」


「お兄ちゃんが結婚をどう考えているか、とか……。あと、私のこと、とか」


「結咲のこと……、それは少し覚えてるな」


私は、下唇を噛んだ。



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