バリキャリ課長の年上彼女は、一途な彼に翻弄される
胸元から出した手帳に、私は携帯の番号を書いた。
「じゃあ、電話しますので、登録してくださいね!仕事に戻ります」
満面な笑顔で応接室を出ていった。

私は、力が抜けてソファに座った。
何なのよ・・・
赤星くんにはどうも調子を崩される。
爽やかさの笑顔から一気に色気をまとう空気に変わった。
逞しい胸の感触が手に残り、近づいた顔を思い出すと、急に恥ずかしくなった。
「私、どうかしてる・・・」
応接室を出て、席へと戻った。

「緑川さん、大丈夫ですか?顔赤いですよ」
「うん、大丈夫よ」
「・・・さっき赤星さんが来てましたけど、何かありました?」
「何もないわよ」
明らかに自分でもいつもと違うのがわかる。
悟られないように意識するから余計だった。
「ふう~ん、そうですか」
この子はこういうところ、するどい。

その日の夜、ソファで本を読んでいると携帯が鳴った。
「見たことない電話番号ね・・・」
取らずに無視していると、止まった。
「間違い電話だったかな」
すると直ぐに、同じ電話番号からかかってきた。
「誰だろう」
そう思いながら、通話ボタンを押した。
黙っていると、電話の向こうから
「緑川さんですか?赤星です」
「赤星くん?あっ、ごめんね。電話とらなくて」
「いえ、僕の携帯番号、登録してくださいね」
「あっ、うん登録しておくね。で、どうしたの?」
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