【完結】甘くて危険な恋の方程式〈捜査一課、女刑事の恋と事件の捜査ファイル〉


「……そんなことが」

 辰野は、すごく悲しみを背負って生きてきたんだ……。わたしたちの知らない悲しみを背負って、生きてきたんだな……。
 
「そして辰野の父親は、判決が覆ることもなく実刑判決が下された。……辰野の父親は刑務所の中でも無罪を主張し続けたが、それに耐え抜くことが出来ずにその半年後、服役中に首を吊って自殺した」

 小野田課長の話を聞いたわたしは、何も言えずにただ涙を流すことしか出来なかった。

「父親が亡くなった後からだ。……辰野があんな風になったのは」

「……え?」

「辰野は父親が亡くなった後から、半グレの連中とつるむ様になったんだ。その度に万引きしたり、親父狩りなどを繰り返していた。 辰野がそうなったのは、いや……。そうさせたのは、正真正銘、俺たち警察だ」

 小野田課長はそう言うと、そのまま取り調べ室から出て行ってしまった。

「信じてくれ。俺はやってない……。やってないんだ、本当だ」

 そうやって泣きながら訴える辰野に、わたしも涙が止まらなくなっていた。
 人は誰でも何かを抱えて生きているというけれど……。辰野もまた、その一人だと知った。
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