色づいて、濁り、落ちていく
そして次の休日。
二人はデートに出ていた。
恋人同士になって初めてだ。

「風が気持ちいいですね!」
車で移動中、少しだけ窓を開けている。
「そうだね」
「どこに行くんですか?」
「ん?アクセサリー、買ってあげるって言ったでしょ?」

「氷河さん」
「んー?」
「ここ、高いですよ。値段…」
「そうだね。ブランド物だからね」
「それに…」
「ん?」
「見ずらいです…商品…」
氷河は美冬を後ろから抱き締めていて、顔をすり寄せている。
「だって離れたくない」
「でも見ずらいです…」
「でも離れない。早く決めよ?」
結局後ろから抱き締められ、頬ずりされながら選んだ美冬。

シルバーのペアピアスを買い、お互いにつけて店を出た。
「綺麗だね、美冬」
「はい。このダイヤが光ってて素敵…」
「僕が言ってるのは、美冬のことだよ」
「え…?あ、ありがとうございます…」
氷河はこうゆう恥ずかしいことを、素直に伝えてくる。
しかも真顔で。
氷河はいつも真っ直ぐなので、言葉もストレートだ。
回りくどい言い方は一切しない。
と言うより、できないのだ。

それが良さである。
でも時には…美冬や部下達を悩ませることもある。

逆に回りくどい言い方をすると、氷河には伝わらないのだ。

「は?僕を置いて、金藤と買い物に行く?
なんで?あり得ない」
「氷河さんは、お仕事があるから。
でもすぐに帰ってきますよ!」
「若は今日、かなり仕事がたまっているので俺が美冬のお供をするだけですよ」

今日は氷河の誕生日だ。
内緒でプレゼントを買いに行きたくて言葉を探すが、氷河には伝わらない。
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