色づいて、濁り、落ちていく
「若、今日は塩田と会うんですよ?
美冬が━━」
美冬の手を引き玄関を出ようとする氷河を、金藤が呼び止める。

「僕が守る」
「いえ!そうではありません!
もし残酷なことになった場合、そんな場面を美冬に見せるんですか?」
「僕と美冬は愛し合ってるんだ。
そこがどんなに残酷な場所で地獄でも、一緒に行くべきなんだ」

「しかし!!」

「おめぇ等!!ちょっと落ち着け!!」
そこに銀蔵が現れた。

「親父」
「オヤジ…す、すんません!」
氷河と金藤が、銀蔵に向き直った。
「氷河、お嬢さんを愛してるんだろ?
だったら、そんな残酷な場所に連れてくべきじゃねぇ…
そんくらい、お前にもわかるはずだ」
「もう…美冬と離れたくない!」
「氷河、お前の大事なモノは何だ?」
「え?」
「お前の、一番、大事なモノだ!何だ?」
「美冬」
「だろ?
そのお嬢さんを見てみろ!」

そこで氷河は美冬を見た。
美冬は泣いていた。
「美冬…」
「氷河さん、私が愛してるのは“氷河さん”です。
だから、ここで氷河さんの帰りを待ってます。
いつものように大丈夫なお仕事の時は、お供させてください!」
美冬は涙を拭い、氷河を見上げて言った。
「わかった」
氷河は静かに呟いて、金藤に連れられ仕事に出かけたのだった。

しかし━━━

仕事“以外”は本当に離れない氷河。
美冬の行くとこ行くとこについて行き、離そうとしない。
「氷河さん、トイレに行くだけですから離してください」
「じゃあついてく。
ドアの前で待ってる」
と、トイレにさえもついて行き、離れないのだ。
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