平凡な私の獣騎士団もふもふライフ4
リズが戸惑っている間にも、シモンが肩を撫で、曲がった裾部分を手で払って整え直した。

「獣の魂を持った子、かい。厄介だね」

魔女が、ザリッと土の上の落ち葉を踏んだ。シモンがジロリと睨む。

「あんた、誰?」

「そこの娘が言った通り、ただの〝魔女〟さ」

赤い唇を引き上げて、含むような笑みを浮かべる。

「ふうん。魔女って、名前を教えないわけ? 名前を教えたら、教え返すのが礼儀だって俺は団長たちに教わったけど?」

「人があたしに『魔女』と名付けた。お前はどうして守る? 助けられたからかい」

魔女が、リズを指差してシモンに問いかける。

「だったら、なんだっていうわけ?」

訝しんだシモンが、リズをより背にかばって低い声で言った。すると魔女が、くつくつと肩を揺らして笑った。

「おかしいね。そもそも、生きていること自体が」

「なんだって?」

ピリッとシモンの空気が引き締まる。

「俺のことを知っている風だけど、随分ひどいことを言う婆さんだ」

「おや、年齢まで野生の勘であてるのかい。姿は、若く作っているつもりなんだけどねぇ。あたしは実際、年寄りになったことだってない」

くすくす魔女が笑った。リズは、シモンが女性に対して吐き捨てるような表情をするのを初めて見たので、気圧されてしまった。

< 100 / 213 >

この作品をシェア

pagetop