平凡な私の獣騎士団もふもふライフ4
「くっそー、本気で拳骨しなくったっていいのにっ」

シモンが、頭を両手で押さえて呻く。そばでカルロが店の前を陣取っており、通りの人々が見やっていっていた。

リズは、シモンのセンス発言に苦笑いを浮かべた。

最終案のデザイン画まで見ていたが、実際に拝見したウエディングドレスは、想像していたよりもっとずっと素敵なものになっていた。

それもこれも、ジェドがリズに似合うものをと、ギリギリまで考えて何度か修正と提案依頼を投げてくれたからだ。

今回は採寸を測りつつ、その最終アレンジについて確認したところだ。

嬉しくなって、また表情が緩んでしまいそうになった。リズは背を屈めて、シモンに感謝を込めて笑いかける。

「シモン君。カルロをみてくれていて、ありがとう」

そう礼を伝えた途端、そばから盛大な鼻息が上がった。

そこには顔を横にそらしたカルロがいた。いかにも『俺がシモンをみていた側なのに』と言いたげだ。

「ふふっ。カルロも、ありがとう」

「ふん!」

リズがもふもふの首回りを撫でて抱き締めると、カルロが照れ隠しのように頭を上げた。けれど十分に撫でさせてから、立ち上がる。

待っていたことを、ジェドが褒めてカルロの鼻の上を撫でた。

段差から歩道へと降りたシモンが、不意にぴくっと鼻を動かし、リズの袖をつまんで向こうを指差した。

「きっと、近くに肉の串を売ってるところがあるよ」

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