オスの家政夫、拾いました。2.掃除のヤンキー編
「じゃなんか作って待ってるよ。連絡してくれ」

「うん、分かった」


そう言って、彩響が玄関で靴を履く。その瞬間、なにか強い力で引っ張られ、カバンを落とした。彩響をギュッと抱きしめた成が顔を近づけてきた。


「ど、どうしたの??」

「あのさ、今更だけど、確認したいことがあって」


そう言って、成が彩響のネクタイを引っ張る。近い距離で成が話を続ける。


「先日、Mr.Pinkのオフィスで、俺についていろいろ話ししてたんだろ?」

「え?あの…聞いてたの?」


成が頷く。それを見ると彩響は自分の顔が熱くなるのを感じた。恥ずかしさでどこかへ逃げたい気分になる。そしてふと、まだ確認していなかった事を思い出した。


「もしかして…Mr.Pinkはあなたが外で聞いていると知ってて、私にいろいろ言わせたの?」

「だと思うよ」

「なっ…!!二人で私を騙したの?!」

「いや、そんなことはない。俺がそこにいたのは本当に偶然だよ。彩響に会いに行かなきゃいけないと思って、オフィスに戻ったら、Mr.Pinkに隣の部屋で待つように言われて…」

「やっぱり騙してる!ぜったい狙ってやってる!」

「まあ、そんな怒るなよ。…俺、あの時お前が何を言ったのかはっきり聞いてない。だから、もう一回言ってくれないか?」


成がやんちゃな笑顔で聞く。恥ずかしい気持ちと幸せな気持ちが混ざって、彩響はどうすればいいのか分からなくなってしまった。恐る恐る彩響が口を開ける。


「…あなたが、どんな風に私に掃除をさせたのか、それがどうやって私の夢につながったのか、説明したよ。私の人生に何が大事なのか、なにを見るべきか、あなたのお蔭で分かるようになった、って」

「そう、そして、俺に「ありがとう」と伝えたかった、と言っただろ?」


成の言葉に彩響が笑ってしまう。


「結局全部聞いていたのね?」

「いや、本当に全部ではないよ。一部だけ。そして、Mr.Pinkには言えて、俺には言えないなんて、なんか悔しくなったからわざと言わせたかったんだ」


そう言って、成が自分の唇を彩響の唇に当てる。とてもかわいくて、温かい感触だった。彩響は微笑んで、成の背中を軽く叩いてあげた。


「もうそろそろ行かなきゃ、遅刻するよ」

「もうちょっとだけ」

「大事なミーティングなのよ?」

「その前に、一つだけ」

「何?」

「本当に俺のこと、好き?俺の「夢」として、この先ずっと一緒にいてくれる?」


成の質問に、今度は彩響からキスをする。深刻だった成の顔がそれで少し和らいだのが見える。彩響は笑顔で答えた。


「あなたが好きよ、この世の誰よりも。だから、あなたの傍にいさせてください」


その言葉を聞いて、やっと成が彩響を離してくれた。もちろん、再びキスするのも忘れずに。彩響は玄関を出て、成に手を振った。


「では、本当に行ってきます!」


「行ってらっしゃい、彩響。待ってるぜ!」




ーオスの家政夫、拾いました。掃除編 完ー


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