冷徹御曹司の最愛を宿す~懐妊秘書は独占本能に絡めとられて~
「娘が破水してしまって。救急車もあと30分かかるそうで」
光江がその人物と話しているのが、薄れる意識の中で聞こえた。
「私が送ります、乗ってください」
その声が聞こえたかと思うと、澪はふわりとした浮遊感が襲った。
「さ、お母さんも早く」
(この声……この腕は)
ぼんやりとした視界に映ったのは、匠馬だった。
「澪、もう大丈夫だ」
「匠馬、さん……」
上がる息で匠馬の名前を呼ぶと「あぁ、そうだ」と力強い返事が聞こえた。その声にホッとして涙が溢れた。
「もしものことがあったら……この子をお願いします」
「何を言ってる。しっかりしろ」
澪を後部座席に乗せると、匠馬は車を走らせる。そして病院に電話をかけていた。
「澪、しっかり」
その隣で、光江が心配そうに身を乗り出し澪に声をかける。
「もうすぐだからね」
声にならずコクコクと頷いた。
気づいたら病院についていた。すぐにストレッチャーに乗せられ分娩台にあがった。子宮口はすでに8センチも開いていた。